11月 | 2000 | ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議

第8号 (2000年11月発行)

東京湾のアナゴが最高のダイオキシン汚染-環境庁調査より-
国民会議副代表 神山美智子(弁護士)
環境庁水質保全局は、公共用水域や水生生物のダイオキシン類(ジベンゾダイオキシンPCDD+ジベンゾフランPCDF及びコプラナーPCB)の汚染度を調査し、8月25日に公表した。うち水性生物は全国543地点2,832検体を調べたもので、平均値は1.4pg-TEQ/gであった。
国民会議では昨年7月、食品のダイオキシン汚染に対し、「段階的に、期限を定めて規制を強化する」よう提言(第2次提言)した。同提言においては、藤原邦達氏(山形大学講師)が、かつてのPCB汚染対策を参考に試算された方法に基づき、近海魚以外の食品の規制値をまず算出し、TDI(耐用一日摂取量)から近海魚に割り当てられるダイオキシンの量を計算し、近海魚の規制値を設定するものである。
第2次提言においては、政府がTDIを4pgと定めたことを批判し、これを3pgにするよう提言した上で、近海魚の規制値を2.7pg-TEQ/gにするよう求めたのである。
しかしながら政府は今日まで、食品、特に近海魚のダイオキシン汚染を規制しようという政策をまったく示さない。
そこで政府の定めたTDI(4pg)を前提にして、これに基づく近海魚の規制値を4.6pg-TEQ/gとし、今回の調査結果のなかから、この値を超える魚類を拾い出してみた。4.6pgという規制値の求め方は、藤原邦達氏の近著(『恒常性かく乱物質汚染』合同出版)に詳しく示されている。
すると、北は青森県陸奥湾のボラ(7.8pg)から、南は北九州市洞海湾奥洞海のコノシロ(13pg)まで多数の汚染魚があることが判明した。中でも、北九州のコノシロのように、残留値が二桁になるものが41検体もあり、最高は、東京湾多摩川河ロのマアナゴ33pgであった。■二桁の汚染は許されない
第2次提言では、肉・卵類を0.2pg、その他の食品を0.1pgと仮に定めた上で近海魚の規制値を導いている。4.6pgでさえ政府の定めたTDIを超えてしまうのに、二桁の汚染を放置している無策は許されないと思う。
少なくとも二桁の汚染を示した水域の魚(たとえば東京湾多摩川河口のマアナゴなど)においては、1地点1魚種1検体ではなく、同一地点から多数の検体を採取して徹底的に調査すべきである。その結果によっては漁獲制限も必要にならざるを得ない。またその場合、当然に所得補償が行われなくてはならない。
さらに、妊娠中の女性や授乳中の女性に対しては、早急に食事指導を徹底する取り組みが必要である。
参考までに上記コノシロとマアナゴ以外で、汚染値が10pgを越すものを示すと以下のとおりである。
栃木県秋山川堀米橋フナ類(16)、群馬県利根川利根大堰ウナギ(25)、千葉県東京湾スズキ(12)、同タチウオ(11)、埼玉県元荒川八幡橋タモロコ(12)、埼玉県名栗湖東部湖岸ニジマス(10)、東京都神田川柳橋サッパ(28)、同神田川柳橋スズキ(27)、同東京湾中央防波堤内側スズキ(14)、同東京湾東京灯標東側マアナゴ(25)、同マゴチ(14)、同マハゼ(11)、同東京湾羽田空港東側マハゼ(10)、同東京湾東京灯標際スズキ(10)、同東京湾多摩川河ロアカカマス(11)、同ウグイ(16)、同コトヒキ(27)、同マハゼ(10)、同東京湾多摩川河口沖サッパ(14)、同マハゼ(12)、神奈川県引地川富士見橋ギンブナ(14)、同川コイ(25)、山梨県川口湖船津沖ウナギ(19)、岐阜県長良川藍川橋デメモロコ(11)、同揖斐川福岡大橋ウナギ(14)、静岡県佐鳴湖湖心ウナギ(10)、愛知県立馬崎沖約lkmヒイラギ(10)、兵庫県淡路島西部南部一宮町撫沖サヨリ(13)、同淡路島西部南部南淡町鳥取沖キチヌ(14)、大阪府神崎川新三国橋ボラ(22)、同メナダ(12)、同大阪湾境港沖ソウダカツオ属(17)、同大阪湾泉大津港沖クロダイ(11)、同大阪湾尾崎港沖クロダイ(10)、同コノシロ(10)、愛媛県新居浜海域ハモ(18)、熊本県天明新川六双橋ウナギ(12)、大分県筑後川三隅大橋ウナギ(10)、大阪市淀川伝法大橋コノシロ(19)
この表(次ページ参照)を見ていると、ため息が出そうになる。特に江戸前の魚に誇りを持ってきた江戸っ子たちにとって、10pgを超す41検体中15検体が東京湾で採取されたものであることは悲しい。

■最高の底質汚染は230pg
水生生物のダイオキシン汚染がひどい地域では、当然のことながら底質の汚染度も高い。全国542地点の公共用水域底質の平均は5.4pgであるのに、東京都の公共用水域底質10地点の値は、すべて10pg以上である。最高は神田川柳橋の41pg、最低でも東京湾羽田空港東側の11pgであった。ダイオキシン類のうち、PCDD+PCDFの占める割合が大きく、コプラナーPCBは少ない。
千葉県側東京湾の底質も6地点調査されているが、うち4地点で23pgを超えている。最高は40pgで、やはりコプラナーPCBは少ない。神奈川県側の東京湾は2地点で底質が調査されているが、どちらも10pgを下まわっている。
全国で最高の底質汚染はなんと230pgで、岡山県倉敷川下灘橋である。うちPCDD+PCDFが210pgを占めている。環境基準(1pg)を超えたものが10地点である。しかし、同じ下灘橋で採取されたゲンゴロウブナの値は14pgで、逆にコプラナーPCBが多い。
底質については、規制基準値は設定されていないが、魚類の汚染を減少させるためにも、規制が必要ではないかと思う。
公共用水域は全国568地点で調査され、平均は0.24pgである。しかし最高値は14pgと、底質の汚染濃度に近いものがあった。この数値を示したのは福島県逢瀬川阿武隈川合流前で、14pgのうち13pgがPCDD+PCDFであった。しかし、この地点で採取された魚類の汚染はそれほどなく、ウグイ2.0pg、フナ類0.67pgである。
近海魚のダイオキシン汚染の原因は、過去に使用された水田除草剤などに含まれているダイオキシン、PCBの不法投棄など、諸説ある。
環境庁が公表した資料のみでは、ダイオキシンの詳しい組成が分からないが、それでもPCDD+PCDFが多い地点や魚とコプラナーPCBの方が多い地点、魚があることは分かる。また原資料を入手して分析することも可能だと思われる。
おいしくて安全な近海魚を食べるために、汚染の原因究明がまずなされなくてはならないし、環境庁は、こうしたデータをより広く、わかりやすく知らせる努力が求められる。


平成11年度公共用水域等のダイオキシン類調査結果について
---都道府県・政令指定都市別調査結果一覧
環境庁水質保全局水質管理課 平成12年8月25日

1. 環境庁は、平成11年度、全国の公共用水域の水質、底質、水生生物及び地下水質のダイオキシン類について調査を行った。今般、建設省が一級河川で調査した分を含め、同年度の全国的な調査結果を取りまとめた。
2. 平成11年度の調査は、平成10年度の全国調査に比べ地点数・検体数を大幅に増やして行われたが、その調査結果の概要は次のとおりである。
環境媒体 平成11年度調査結果
地点数 平均値 濃度範囲
公共用水域水質 地点
568
pg-TEQ/L
0.24
pg-TEQ/L
0.054~14
地下水質 地点
296
pg-TEQ/L
0.096
pg-TEQ/L
0.062~0.55
公共用水域底質 地点
542
pg-TEQ/g
5.4
pg-TEQ/g
0.066~230
水生生物 検体
2,832
pg-TEQ/g
1.4
pg-TEQ/g
0.032~33
3. 環境庁としては、この調査結果をダイオキシン類対策特別措置法に基づく各都道府県・市の環境監視等に活用していただくとともに、さらに分析を加え環境基準の検証等のための重要な知見として用いていく。

I 調査の内容

趣旨
本調査は、水環境中におけるダイオキシン類の実態を全国的に把握し、環境基準の検証等に必要な知見の集積を図るため、平成10年度ダイオキシン類緊急全国一斉調査(以下「平成10年度調査」という。)に引き続き、公共用水域の水質、底質、水生生物及び地下水質について調査を行ったものである。
なお、一級河川・直轄区間については建設省が調査を分担し、環境庁が行った調査とあわせて、ここに集計した。
調査対象媒体
公共用水域水質・底質、水生生物
地下水質
調査地域及び地点数
1) 公共用水域の水質・底質
各都道府県毎に、環境基準点を基本とし、各10地点程度を選定。
なお、建設省調査は、一級河川・直轄区間について各水系2地点程度を選定。
具体的には、水質568地点(うち建設省調査72地点)、底質542地点(同48地点)を対象。
2) 水生生物
1)の調査地点のうち、水生生物が採捕可能な地点で実施。
具体的には、543地点2,832検体(うち建設省調査45地点116検体)を対象。
3) 地下水質
各都道府県毎に、飲用井戸を中心に、各6井戸程度を選定。
具体的には、296地点を対象。
検体採取時期
原則として、平成11年9月から11月。
調査対象物質
ダイオキシン類(PCDD、PCDF及びコプラナーPCBのうち表1に示す異性体)を対象とし、各異性体の毒性等価係数(TEF)はWHO-1998によった。
異性体ごとの定量下限値及び検出下限値は表1のとおり。
検出限界値未満の数値の取扱は、それぞれの異性体について、検出下限以上の値はそのままその値を用い、検出下限未満の値は検出下限の1/2の値を用いて、各異性体の毒性等量を算出し、それらの値を合計して毒性等量を算出した。
調査方法
1) 公共用水域水質・地下水質
河川水は、原則として2回、測定を行った。1検体は、試料水を2日に分けて採取し、混合したものを用いた。
湖沼、海域、地下水については、1回・1日の試料水を採取し測定した。
その他については、日本工業規格「工業用水・工場排水中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法JIS K 0312 : 1999 」によった。
2) 底質
ダイオキシン類に係る底質調査暫定マニュアル(平成10年7月環境庁水質保全局水質管理課)によった。
3) 水生生物
ダイオキシン類に係る水生生物調査暫定マニュアル(平成10年9月環境庁水質保全局水質管理課)によった。

II 調査結果

公共用水域水質
公共用水域の水質については、全国568地点で調査を実施した。
ダイオキシン類濃度の平均値は0.24pg-TEQ/lで、平成10年度調査結果(平均0.40pg-TEQ/l)より低く、濃度範囲は0.054~14pg-TEQ/lで、平成10年度調査結果(0.0014~13pg-TEQ/l)とほぼ同程度であった。
また、環境基準(1pg-TEQ/l)を超過したのは10地点(全体の1.8%)であった。
地下水質
地下水質については、全国296地点で調査を実施した。
ダイオキシン類濃度の平均値は0.096pg-TEQ/lで、平成10年度調査結果(平均0.081pg-TEQ/l)と同程度であり、濃度範囲は0.062~0.55pg-TEQ/lで、平成10年度調 査結果(0~5.4pg-TEQ/l)の範囲内であった。
また、環境基準値(1pg-TEQ/l)を超過した地点はなかった。
公共用水域底質
底質については、全国542地点で調査を実施した。
ダイオキシン類濃度の平均値は5.4pg-TEQ/gで、平成10年度調査結果(平均7.7pg-TEQ/g)より低く、濃度範囲は0.066~230pg-TEQ/gで、平成10年度調査結果(0~260pg-TEQ/g)の範囲内であった。
水生生物
水生生物については、全国543地点2,832検体で調査を実施した。
ダイオキシン類濃度の平均値は1.4pg-TEQ/gで、平成10年度調査結果(平均2.1pg-TEQ/g)より低く、濃度範囲は0.032~33pg-TEQ/gで、平成10年度調査結果(0.0022~30pg-TEQ/g)とほぼ同程度であった。

III 精度管理の実施

本調査では、ダイオキシン類の測定結果の精度管理のため、環境庁及び(財)日本環境衛生センターが以下の措置を行った。
各測定機関が作成した試料採取、前処理、分析の各段階における精度管理の計画書を、測定前に審査。
専門家、(財)日本環境衛生センター担当者及び環境庁職員が、各測定機関の査察を行うとともに、必要に応じて分析手順、チャート等を精査。
底質及び水生生物の共通試料を各測定機関に提供し、各機関の測定結果を回収して点検。
以上の結果、分析能力上問題となる機関はなかった。

IV まとめ

1) 調査結果の評価
本調査は、平成10年度調査と比較して、環境基準点を中心に調査地点・検体数を大幅に増やし実施した。
各環境媒体ごとのダイオキシン類濃度の平均値は、平成10年度調査のそれに比べ概ね低くなったが、これは調査地点数の増加による影響もあると考えられるので、両年度の平均値の比較をもって経年的な濃度変化を論ずることはできないと考える。
一方、各環境媒体ごとの検出値の範囲は、調査地点・検体数の大幅な増加にかかわらず、概ね平成10年度調査結果の範囲内であった。
2) 今後の取組
本調査で明らかになった一部の高濃度事例については、既に関係自治体において原因究明対策などの取組が行われている。
今後、この調査結果を活かして、ダイオキシン類対策特別措置法に基づく都道府県・市による環境監視などの適正かつ効果的な運用を図っていく必要があり、環境庁として、その徹底を期していく。
なお、ダイオキシン類に係る環境監視は、平成12年度以降、ダイオキシン類対策特別措置法に基づいて、都道府県・市による常時監視に引き継がれる。
大江川から基準値の23倍のダイオキシン
江戸川大学講師 川名英之
高濃度のダイオキシンが検出された大江川=名古屋市港区本星崎付近で、9月写す。毎日新聞社提供

■川の水の汚染から始まった発生源探し

名古屋市港区の大江川の水質から環境基準を大幅に上回るダイオキシンが検出され、市が調べた結果、発生源は化学繊維紡績業の大手、東レ名古屋事業場(港区本星崎町、佐々田泰彦場長)の製造工程であることが分かりました。同市はこの事業場に対し、汚染防止のための改善を勧告するとともに、市内の類似施設の総点検を実施しました。
大江川のダイオキシン汚染が分かったのは6月。名古屋市が大江川の約1キロ北側に計画中のごみ最終処分場を建設する関係で大江川の水質を採取して、測定したところ、環境基準である1リットル当たり1ピコグラム(1ピコグラムは1兆分の1グラム)の23倍に当たる23ピコグラムのダイオキシンが検出されました。そこで市は発生源調査を始めました。

■東レ事業場排出ロから170ピコグラム

発生源をつかむため、名古屋市は大江川に流されている7工場・事業所の排出水を詳しく分析しました。その結果、9月14日、東レ名古屋事業場の排出口から採取した水から1リットル当たり170ピコグラムという高濃度のダイオキシンが検出され、発生源を特定しました。今年1月、施行された「ダイオキシン類対策特別措置法」は適用が1年間、猶予されているので、同法違反にはなりません。
同市が東レの工場内でダイオキシンがどのように生成されたのか・調査した結果、この工場は1963年からシクロヘキサンに塩化ニトロシルを反応させて、合成繊維ナイロンの原料であるカプロラクタムを製造しています。ダイオキシンが生成されるのは、この生産工程のうちカプロラクタムを合成する前段階の塩酸や硫酸に含まれる水を除去する脱水工程。この脱水工程から出るヰ非出水から2600ピコグラムという非常に高濃度のダイオキシンが検出されました。

■汚染が長い間、続いていた可能性も

名古屋市環境局は同日の市議会総務環境委員会で東レ名古屋事業場に対し、汚染防止対策の徹底を求め、改善勧告をするとともに、「塩素を使う生産工程でダイオキシンが生成される可能性がある」とみて、市内の化学工場など類似生産工程を持つ事業場を総点検することを決めました。同日の市議会総務環境委員会で、「ダイオキシンが長い間、大江川に垂れ流されていてのか」という質問に対し、市環境局の柴田伸幸公害対策課長は「推測の域を出ないが、その可能性はあり得る」と答弁しました。

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