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STOP!環境ホルモン―赤ちゃんが危ない―

STOP! 環境ホルモン

家庭用殺虫剤・ガーデニング用農薬

どうして農薬が体内に?

 P.12の表にあるように、私たちの血液・尿からは有機塩素系(POPs)、有機リン系、ネオニコチノイド系、ピレスロイド系の農薬やその代謝物が検出されています。では、私たちはどこからこれらの農薬を体に取り込んだのでしょうか。
 一つは、家庭用殺虫剤やシロアリ駆除剤です。表❶のように数多くの殺虫剤が家庭で使われ、室内の空気を汚染しています。とくにシロアリ駆除剤は絶えず床下から揮発し、室内に流入しています。
 もう一つは、ガーデニング用の農薬(表❷)です。最近、家庭菜園、庭木・草花、鉢植えの植物・盆栽などのガーデニングでも、害虫の防除や病気の予防、除草のために農薬が使われています。このような農薬も散布に伴って私たちの体に入り込んでいます。
 さらに、野菜・果物・茶などには、栽培時に使用された農薬が残留しています。中には、カビなどの発生を防ぐための食品添加物として、ポストハーベスト農薬*1が使用される場合もあります。これらは食物とともに私たちの体内に取り込まれているのです。

農薬の作用メカニズム

 農薬の作用メカニズムはさまざまですが、昆虫や植物の体内での化学反応の一部を阻害することによって効果を発現するものがほとんどです。以下はその例です。
①植物の光合成を阻害するもの…ブロマシル、シマジンなど
②動植物のエネルギー代謝を阻害するもの…リン化アルミニウム、ダラポン(DPA)など
③動物の神経刺激伝達作用を阻害するもの…有機リン系、カーバメート系、ネオニコチノイド系殺虫剤など
④植物のホルモン作用をかく乱するもの…MCPなど
⑤タンパク質の合成を阻害するもの…グリホサート、チオベンカルブなど
⑥DNA合成を阻害するもの…ベノミルなど

表❶ 主な家庭用殺虫剤、シロアリ駆除剤

種類商品例
エアゾール式殺虫剤ピレスロイド系アースジェット、キンチョール、フマキラー A、ゴキジェットプロ、虫こないアースあみ戸にスプレーするだけ!
蚊取線香・電気蚊取ピレスロイド系アース渦巻香、金鳥の渦巻、ベープマット、アースノーマット、キンチョウリキッド
害虫忌避剤ピレスロイド系虫よけスプレー、バポナあみ戸に貼るだけ!、虫コナーズプレート、ガラスに虫コナーズ
誘引殺虫剤ネオニコチノイド系コンバット、ブラックキャップ、アリの巣コロリ、コバエがホイホイ
くん煙・加熱蒸散剤ピレスロイド系アースレッド W、バルサン・SP ジェット、アースレッドプロ、キンチョウジェット煙タイプ
殺虫プレート有機リン系バポナ殺虫プレート
ペット用ピレスロイド系ペットカラー薬用ノミトリ首輪
ピレスロイド系ヘキサチン S イヌ用のみとり粉、ピレスロンパウダー
動物用医薬品フロントラインプラス
アドバンテージプラス
シロアリ駆除剤ネオニコチノイド系ハチクサン、タケロック、オプティガード、ミケブロック、クロスガード
フェニルピラゾール系グレネード、アジェンダ
ピレスロイド系ホルサー、メトロフェン、アリデン
カーバメート系バグトップ
その他トップエース、シロネン

表❷ 主なガーデニング用農薬

種類商品例


有機リン系オルトラン、スミチオン、マラソン、ディプテレックス、ダイアジノン
ネオニコチノイド系モスピラン、マツグリーン、ベストガード、アドマイヤー、ダントツ、アルバリン、クルーザー F330、エコワン3フロアブル
ピレスロイド系カダン、トレボン、ベニカ D スプレー
カーバメート系カルバリル
殺菌剤ベンレート、マンネブダイセン M、ジマンダイセン、ダコニール
除草剤2.4-D、シマジン、ラウンドアップ、バスタ、ネコソギエース、ダラポン、クサノン、ネコソギトップ、カソロン、グラモキソン

人体への影響は?

 既述のとおり、農薬は、昆虫や植物の体内の化学反応の一部を阻害することで効果を発現するものですが、人間の体内では昆虫・植物と同じような化学反応が起こっていますから、農薬が人間の体内に入ると、昆虫・植物と同じような効果(毒性)が現れます。
 例えば、昆虫の神経系の神経伝達をかく乱して死に至らしめる殺虫剤(有機リン系、カーバメート系、ネオニコチノイド系)は、人間の神経系にも影響を及ぼします。とくに、子どもの脳神経の発達への悪影響が懸念されています。また、DNAの合成阻害や細胞分裂阻害作用のある殺菌剤には、人間の遺伝情報や成長をかく乱し、がんや奇形発生の原因となるものがあります。
 さらに、遺伝子そのものを傷つけなくても、偽ホルモンとして人間の体内のシグナル作用をかく乱させる、いわゆる「環境ホルモン農薬」の疑いのある農薬もあります。できるだけ農薬を使わない、取り込まない暮らしを心がけましょう。

環境ホルモンが疑われる農薬

 日本では、1998年に環境省が「環境ホルモン戦略計画SPEEDʼ98」を策定し、「環境ホルモンが疑われる物質」として67物質をリストアップしていました。その中には農薬が44物質含まれていました。
 米国では、2009年に環境ホルモンのスクリーニングプログラム(EDSP)を策定し、その第一陣として、67の対象物質をリストアップしました。その中には、日本で現在使用されている農薬も含まれています。
 EUでは、男性ホルモン阻害作用をもつ農薬のチェックが行われた結果、使用量の多い上位50種の4割にあたる20種類の農薬に男性ホルモンを阻害する作用が見つかりました(2011年発表)。このうち、日本で使用実績のある農薬を生産・輸入量の順に並べたものが表❸です。日本で食品添加物(ポストハーベスト農薬)として許可された7種類の防カビ剤のうち、4種類に男性ホルモン阻害作用が見つかっています。輸入果物(レモン、オレンジ、グレープフルーツなど)にはこれらの防カビ剤が使用されていることが多いので注意が必要です。これらの食品添加物は表示が義務づけられていますので、よくチェックして、使われていないものを選びましょう。
*1…収穫後の農作物に使用される薬剤をいいます。害虫・カビの発生や貯蔵中の発芽を防ぐため、収穫後に散布されます。日本は、ポストハーベスト農薬の使用を認めていませんが、輸入品のポストハーベスト農薬を食品添加物として許可しています。

種類成分名商品名日本での生産輸入量(t)
殺虫剤フェニトロチオン(MEP)スミチオン1770.6
シハロトリンサイハロン2.2
ビフェントリンテルスター1.4
殺菌剤プロシミドンスミレックス854.4
テブコナゾールオンリーワン、ミラージュ114.0
フルジオキソニル *(食品添加物)13.5
フェンヘキサミドジャストミート、バスワード9.3
プロクロラズスポルタック4.1
ジメトモルクフェスティバル4.0
ジブロジニルユニックス0
イマザリル *(食品添加物)未登録
ピリメタニル *(食品添加物)登録失効
OPP*(食品添加物)登録失効(1969)
除草剤クロロプロファム(IPC)IPC、クロルプロファム66.4
リニュロンロロックス65