いま環境ホルモンは
環境ホルモンはなぜ日本では空騒ぎになったのか
環境ホルモンへの関心が高まる欧米、生物への「世界的脅威」と認識するWHO。
日本ではなぜ注目されないのか。
「環境ホルモン空騒ぎ」論
日本では、1997年に『奪われし未来』が翻訳出版されたのを機に、環境ホルモン問題は大きな社会的関心を集めました。環境省も翌1998年5月に研究計画を発表し、これに対して、産業界寄りの学者やジャーナリストを中心とする「環境ホルモン空騒ぎ」論が新聞・雑誌などに相次いで掲載されたのです。その後、環境省が「一部の物質は魚類への影響が認められたが、人間への明らかな影響は認められなかった」との試験結果を報告すると、これが空騒ぎ論を助長しました。このため2005年には環境省も環境ホルモンリストを廃止するとともに、研究計画を大幅に縮小せざるを得なくなったのです。
そうした流れの中で、環境ホルモン問題への社会的関心の高まりは「根拠のない騒動(空騒ぎ)」と総括され、問題がなかったような印象を与えました。しかし、それが誤りであったことは、その後の世界の研究結果からも明らかです。今や、WHOも環境ホルモンは人間・野生生物に対する「世界的脅威」であると指摘しています。
では、なぜ環境省の試験では人間への有害影響が出なかったのでしょうか。実は、環境ホルモンは新しい毒性なので、その試験には新しい試験法の開発が不可欠でした。環境省の試験は一つのトライアルに過ぎず、試験法そのものに問題があって結果が出なかったのかもしれません。たった一つの試験法で影響が出ないからといって安全だとはいえません。それにもかかわらず「環境ホルモンは大した問題ではない」と結論づけたことに問題があったのです。
情報伝達をかく乱する新たな毒性
では、環境ホルモンの毒性のどこが新しいのでしょうか。それは、標的となる細胞を攻撃するのではなく、間違った情報を細胞に伝えて誤作動をさせることにあります。環境ホルモンは、生物が体内で細胞同士の情報伝達に使うホルモンをかく乱して悪さをします。
細胞には受容体とよばれるたんぱく質があって、そこにホルモンが結合することで遺伝子に働きかけて必要な活動を促します。ホルモンの種類は50種類以上あり、それぞれのホルモンは特定の受容体とだけ結合し、対応する受容体を持たない細胞には何の作用もしません。しかし環境ホルモンは、本来のホルモンに代って細胞の受容体に結合し、間違ったタイミングで細胞に情報を伝えてしまうのです。
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