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STOP!環境ホルモン―赤ちゃんが危ない―

いま環境ホルモンは

安全な量を決められない―EUでは使用禁止に

感受性が高い胎児期は、環境ホルモンにばく露すると
取り返しがつかない影響を受ける。

 世界に先駆けて、EUが農薬や殺虫剤について環境ホルモンを原則使用禁止しました。その理由は、次に述べるように環境ホルモンはこれ以下なら安全という量(閾値)が決められないと判断されたからです。ただし、何が環境ホルモンなのかの判定基準はまだ定められていません。

ごく微量で作用する環境ホルモン

 環境ホルモンの特徴の一つに、従来の毒性試験では影響が出ないと判断される量よりさらに低い量で影響が確認されることが挙げられます。体内のホルモンはごく微量で作用するので、環境ホルモンもごく微量で体内にかく乱を起こすのです。これは低用量影響といわれ、日常的に私たちがばく露している量でも有害影響が懸念されます。
 その一例として、ビスフェノールAの場合、欧州の従来の毒性評価では、実験動物の母親への投与による子どもの体重の減少などの悪影響を理由に一日摂取許容量(TDI)が決められました。しかしその後、私たちが実際にばく露している程度より低い用量を母親が摂取した場合でも、脳神経の発達障害や肥満、生殖異常、成長後の乳がんの増加などの影響が子どもに出るという研究結果が発表されました。
 フランスの食品環境労働衛生安全庁(ANSES)はビスフェノールAの低用量影響を認めて規制強化を勧告しました。一方、EUの欧州食品安全機関(EFSA)は2015年1月、ANSESが認めた同じ低用量影響の試験結果について信頼性が低いと却下しました。しかしEFSAは、TDIについては従来の10倍以下に下げるよう勧告しています(P.14参照)。アメリカでは保健福祉省(DHHS)が確認のため大規模試験を実施中です。このようにビスフェノールAの低用量影響については、評価が分かれ決着がついていません。

ばく露のタイミングによって異なる影響が……

 ホルモンの働きは大人と子どもでは違います。大人の場合は、正常な状態の維持だけなので、一時的にホルモンのかく乱があっても、また元に戻ることで有害影響は一時的ですみます。
 しかし、胎児や幼児の発達期は違います。その時期には1個の受精卵がさまざまな細胞や器官に分化して人体をつくり上げていく時期です。そうした発達のプログラムを調整しているのがホルモンの働きです。発達期のホルモンのかく乱は、体の各組織の形成や細胞のプログラミングに異常を起こし、その影響は一生涯続くことになります。
 鎮静・睡眠薬のサリドマイドを服用した妊婦から生まれた子どもが被害を受けた事件が過去にありました。母親が妊娠3~8週にサリドマイドにばく露し、子どもに四肢欠損などの被害が出ました。これに対して妊娠3週以前に母親がサリドマイドにばく露した場合は、四肢欠損はなく自閉症になった子どもが多かったのです。このように、細胞が分化して器官へと発達する時期は環境ホルモンのばく露による影響が大きいと考えられます。

発達における感受期 胎児期は一定の時期に器官が形成されます。この時期に環境ホルモンにばく露しホルモンの働きがかく乱されると、器官形成に不可逆的な影響を与えてしまいます。