国際的な規制と各国の取り組み
◆POPs条約:PFOSとPFOAは規制対象、PFHxSは規制の検討中
環境中での残留性(難分解性)、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念される残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)を規制する条約で、PFASのうち、PFOSは製造・使用、輸出入が制限される物質(附属書B)、PFOAは製造・使用、輸出入が原則禁止される物質(附属書A)として指定されています。今後、PFHxSも規制対象物質として指定される見込みですが、現時点では、その他の代替物質として使用されているPFASについては検討されていません。
◆米国:連邦レベルでは水道水質基準の規制値化を目指し、州レベルでは様々な規制
連邦政府では、飲料水について、安全飲料水法で最大汚染レベル(MCLs、日本の水道法の水質基準に相当)が規定されていますが、現在のところ、PFASは規制対象ではありません。ただし、米国環境保護庁(EPA)が一生飲み続けても健康に悪影響がないと考えられる飲料水の健康勧告値としてPFOSとPFOAの合算値を70ng/Lと設定しており、規制に向けた議論が進められています。2021年に米国EPAは「PFASの戦略的ロードマップ」を発表しました。
各州政府レベルでも様々な取り組みがなされています。ニューヨーク州は、飲料水について、連邦よりもMCLsを厳しくし、PFOSとPFOAについてそれぞれ10ng/Lとしています。ワシントン州ではPFOSとPFOAだけではなく、PFNA、PFHxS、PFBSについても対策を取ることを検討し、水道水以外の対策として、2023年から食品包装紙等へのPFASの使用を禁止することを決めました。メイン州では、2030年からPFASを含む製品の販売を禁止する法律が成立し、州環境保護局によって「健康、安全、あるいは社会の機能のために不可欠であり、合理的に利用可能な代替物がない」場合にのみ、例外的に販売が認められることになります。
◆デンマーク:食品容器包装について全てのPFASを使用禁止に
デンマークでは、PFASが食品に移行しないように有効な障壁が設けられている場合を除き、食品包装や食品と接触する物品に全てのPFASの含有を禁じる政令が2020年7月から施行されています。
◆EU:全てのPFASを原則禁止に
EUでは、2020年10月に「持続可能な化学物質戦略 有害物のない環境を目指して」を公表し、PFOSやPFOAのみならず、全てのPFASについて、原則として使用禁止とするとしています。ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの5か国は共同してREACH規則に基づき欧州化学品庁(ECHA)に全てのPFASを制限する提案を2022年7月までに行うことを公表しており、PFAS規制が進みそうです。
◆オーストラリア:包括的にPFAS削減に取り組む
オーストラリアでは、2020年1月にPFAS国家環境管理計画第2版を策定しました。耐容一日摂取量(TDI)だけでなく、水道水、レクリエーション用の水、土壌、生態系などに関し、それぞれ細かく指針値を設け、削減に取り組んでいます。