メニュー 閉じる

STOP!環境ホルモン―赤ちゃんが危ない―

いま環境ホルモンは

複数の環境ホルモンのばく露による複合影響

環境ホルモンは体内の情報伝達をかく乱する「シグナル毒性」の一つだった。

無視されてきた複合影響

 安全な摂取量が決められないもう一つの理由が複合影響です。P.12の尿や血液の化学物質調査のようなバイオモニタリングでも明白な通り、私たちは日常的に数多くの化学物質にばく露しています。化学物質の一つ一つに有害影響を起こさない安全基準を定めても、同時に複数の化学物質にばく露している場合、その安全基準は現実的ではありません。
 特に同種のホルモンへ作用する環境ホルモンの場合、複合影響が発生する可能性は高くなります。2002年には細胞を使った実験で複合影響が確認されました。女性ホルモン作用のある化学物質8種類をばく露させた場合、個々の物質単独では反応を起こしませんが同時にばく露させると女性ホルモン作用が観察されたのです*1。その後、動物(ラット)に男性ホルモンを阻害する複数の殺菌剤などを同時投与した実験でも、複合影響によって雄ラットのメス化が進んだという結果が出ています*2。

神経系や免疫系の情報伝達もかく乱する「シグナル毒性」

 環境ホルモンによる悪影響は内分泌系への影響にとどまらず、もっと広範囲にわたる可能性が指摘されています。体の中で情報伝達に使われる化学物質は内分泌系のホルモンだけではありません。神経系では神経伝達物質*3や、免疫系ではサイトカインなども、ホルモンと同様に細胞にある受容体を介することで情報伝達をします。
 殺虫剤は、神経細胞同士の信号をかく乱して神経の働きを麻痺させる作用によって虫を殺します。虫も人間も神経の働きは大変よく似ているため、殺虫剤の有効成分は、虫は死んでも人には影響が出ない量に設定されていますが、そのような少ない量でも子どもの神経発達に影響を与えるという疫学調査が出ています。
 また、肥満や心臓疾患、脳卒中などの代謝系にも環境ホルモンが影響を与えている可能性が指摘されています。これらの影響を、体内の細胞同士の正常な情報伝達(シグナル)をかく乱するという意味で「シグナル毒性」という概念でまとめようという提案が出されています。
*1…Silva E et al. Environ. Sci. Technol., 2002, 36 (8).
*2…Hass U et al. Environ Health Perspect. 2007; 115 (Suppl 1): 122-128.
*3…神経伝達物質には、ドーパミン、セロトニン、アセチルコリンなど60以上の種類があります。

従来の毒性とシグナル毒性の比較 従来の毒性が直接細胞の機能に異常をきたすのに対して、シグナル毒性は細胞の中にある受容体を介して細胞に誤ったシグナルを与えることで有害作用を起こします。
(資料:「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議ニュースレター」91号、立川涼代表・菅野純博士対談記事)