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STOP!環境ホルモン―赤ちゃんが危ない―

いま環境ホルモンは

子どもの脳神経の発達と環境ホルモンの関係とは

化学物質がもたらす子どもへの影響について
科学的証拠が蓄積されている。

環境ホルモンが子どもの脳神経の発達障害を引き起こす?

 ADHD(注意欠如多動性障害)、自閉症などの子どもの脳神経の発達障害が先進諸国で増加しています。それが過去数十年間に激増した環境ホルモンのばく露と関連しているのではないかという懸念が広がっています。
 WHOの報告書(2012年)では、これまで集まった科学的証拠から、環境ホルモンが野生生物や人間の脳神経の発達に干渉し、認知機能やIQ低下などの悪影響を及ぼすことが明らかにしています。その中でも最も証拠が固まっているのは、カネミ油症事件の引き金となったポリ塩化ビフェニル(PCB)に関するものです。台湾でも油症事件が起き、妊娠中にPCBに汚染された食用油を食べた母親から生まれた子どものIQが低下しました。また、PCBに汚染された米国ミシガン湖の魚を食べていた母親から生まれた子どもにも同様の影響が出ました。
 この他にも環境ホルモンのばく露と子どもの脳神経の発達の関連を示唆するさまざまな研究結果が相次いで発表されています。マウスの実験では、難燃剤(PBDE)を投与した妊娠中の母マウスは甲状腺ホルモンのレベルが大きく変化し、その仔マウスは多動になるなどの行動への影響が出ました。母マウスにビスフェノールA(BPA)やフタル酸エステル類を投与した実験では、生まれたメスの仔マウスは攻撃的で多動になりました。また、最近注目されているパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などの有機フッ素化合物が脳神経の発達に及ぼす影響についても研究が進められています。
 古くから指摘されているのは、水銀や鉛など重金属の子どもへの影響です。母親の胎内でメチル水銀にばく露した胎児性水俣病の子どもには、脳の発育の遅れや、重い障害が見られました。鉛は子どもの学習機能や注意力などを低下させ、問題行動を増加させるといわれています。
 米国のグランジャン博士らは2006年、人間の脳神経の発達を阻害する恐れのある201種類の発達神経毒性物質を同定しました*1。さらに、子どもが同時に複数の環境ホルモンにばく露している現代社会では、それらの複合影響の解明が必要とされています。しかし残念なことに、化学物質の発達神経毒性試験は日本の法律では要求されていません。何万種類もある化学物質は、脳神経の発達を阻害する毒性があるのか不明のまま市場に出回っているのが現状です。
*1…P Grandjean, PL Landrigen. Lancet 368 (2006).