メニュー 閉じる

STOP!環境ホルモン―赤ちゃんが危ない―

STOP! 環境ホルモン

食品や医薬品に含まれる環境ホルモン

食品

カドミウム

 カドミウムは、水田などの土壌に残留しています。また、貝類やイカ、タコなどの軟体動物、エビやカニなどの甲殻類の内臓に蓄積されやすいことがわかっています。日本人は、1日のカドミウム摂取量の約4割を米から摂取していると推定されています。
 イタイイタイ病の原因物質として知られるカドミウムは、鉱物中や土壌などの天然に存在する重金属です。人が食品から摂取したカドミウムは腎臓に蓄積され、やがて腎機能障害を引き起こす可能性がありまます。
 そのため日本では食品衛生法に基づき、米、清涼飲料水および粉末清涼飲料にカドミウムの規格基準値が設定されています。とくに米のカドミウムの基準値は2011年2月以降、従来の「玄米1.0mg/kg以下」から「玄米及び精米0.4mg/kg以下」に変更されました。

水銀(メチル水銀)

 大型のマグロなど一部の魚介類には、食物連鎖によって濃縮された比較的高濃度の水銀(メチル水銀)が含まれています。メチル水銀は水俣病の原因物質で、出生後の子どもの神経発達機能に異常をきたす恐れがあります。
 日本では1973年、魚介類の水銀の暫定的規制値を総水銀0.4ppmおよびメチル水銀0.3ppmと設定しましたが、とくに胎児は水銀の悪影響を受けやすいので、厚生労働省はキンメダイ、メカジキ、クロマグロなど水銀濃度が高い一部魚介類に関して妊婦を対象とする摂取量の目安を作成しました。
 体内の水銀の約半分は、約2か月で体外に排出されるといわれています。しかし、胎児に及ぼす影響を考えると、現在妊娠中の妊婦のみならず妊娠する可能性のある女性も、水銀濃度の高い魚介類を知り、これらに偏った食べ方は避けましょう。

妊婦の魚の摂取には注意が必要です

厚生労働省は、妊婦を対象に比較的水銀濃度の高い魚介類の摂取量の目安を右表のように示しています。また2014年、米国FDA(食品医薬品局)と米国EPA(環境保護庁)は、妊婦の魚の摂取は多くとも1週間に2~3皿(220~340g)程度とし、比較的水銀濃度の低い魚(例えば、サーモン、エビ、タラ、ナマズなど)を選んで食べるように注意を促しています。

妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂食量(筋肉)の目安

摂食量(筋肉)の目安魚介類
1回約80g として妊婦は2か月に1回まで
(1週間当たり10g 程度)
バンドウイルカ
1回約80g として妊婦は2週間に1回まで
(1週間当たり40g 程度)
コビレゴンドウ
1回約80g として妊婦は週に1回まで
(1週間当たり80g 程度)
キンメダイ
メカジキ
クロマグロ
メバチ(メバチマグロ)
エッチュウバイガイ
ツチクジラ
マッコウクジラ
1回約80g として妊婦は週に2回まで
(1週間当たり160g 程度)
キダイ
マカジキ
ユメカサゴ
ミナミマグロ
ヨシキリザメ
イシイルカ
クロムツ
(資料:厚生労働省平成17年11月2日/平成22年6月1日改訂)

ヒ素

 海藻類や魚介類にはヒ素が多く含まれています。ヒ素は、これまでも、森永ヒ素ミルク事件や神栖の井戸水汚染事件などの原因物質とされ、重篤な場合はヒ素中毒を起こし、子どもの発達に悪影響を与えるとされています。
 食品衛生法の残留農薬規制や水道法の水質基準により、農作物や飲料水などにはヒ素の規制がありますが、海産物についての規制はありません。有機ヒ素より毒性の高い無機ヒ素を多く含有するヒジキ*1は、鉄分やカルシウムなど有益な成分も多いのですが、食べ過ぎないように注意しましょう。

乾燥総ヒ素乾燥無機ヒ素水戻し総ヒ素
ひじき平均値
(n =9)
110mg/kg77mg/kg
わかめ平均値
(n =5)
35mg/kg0.3mg/kg 未満
こんぶ平均値
(n =7)
50mg/kg0.3mg/kg 未満
のり平均値
(n =7)
24mg/kg0.3mg/kg 未満

 鉛は環境中に広く分布する物質で、私たちは日常的に飲料水や食品(器具・包装による汚染を含む)、大気、土壌、室内のホコリから幅広いばく露を受けています。このうち、成人の主なばく露源は食品・飲料水ですが、子どもの場合は、これらに加えてマウシング(口に入れて確かめる乳幼児特有の習慣)や室内のホコリ、土壌もばく露源となっています。
 鉛は多くの食品群に広く分布しており、2008年の農水省の調査では、米、小麦、大豆、かんしょ、さといも(皮つき)、ほうれんそうなどが比較的高い値を示しています。日本では近年まで鉛製の給水管が使用されており、2001年に東京都が鉛給水管を使用している家庭の朝一番の水を調査したところ、13~35%が水質基準を超過していました。また、鉛はタバコにも含まれており、受動喫煙によって子どもの血中鉛濃度が上昇することが複数の研究で示されています。
 鉛の有害性については、職業ばく露による鉛中毒が知られており、より低濃度の継続的な鉛ばく露でも、神経系、心血管系、生殖などへの影響や遺伝毒性があるとされています*2。とくに、発達段階にある胎児・子どもの中枢神経系への影響が懸念されています。生後2週~8歳の子どもの消化管における鉛の吸収率は約40%で、大人の3~4倍と高いのです。鉛については、摂取量ではなく血中鉛濃度に基づいてリスク評価が行われます。最近の疫学調査では、10μg/dL以下の低い血中濃度でも子どものIQ低下を示唆する報告が数多く出されています*3。
 内閣府食品安全委員会の鉛ワーキンググループは2012年3月、有害影響を及ぼさない血中鉛濃度として、胎児・子ども、妊婦、授乳中の女性は4μg/dL以下、一般成人は10μg/dLを提案。2007年の調査では、子どもの血中鉛濃度の中央値は1.4μg/dL、最大値は7.7μg/dLでした*4。4μg/dLを超える子どもがいることから、さらに削減対策が必要です。

医薬品・医薬部外品

パラベン(パラオキシ安息香酸エステル類)

栄養ドリンクの一部にはパラベンが入っています

 「アリナミン」「ユンケル」「チョコラBB」などの栄養ドリンクには、保存料としてパラベンが使用されています。パラベンは、正式にはパラオキシ安息香酸エステルという物質ですが、使用量が多いのはエチルパラベン、ブチルパラベンなどの4種類です。パラベンの中でもとくにブチルパラベンとプロピルパラベンは、動物実験の結果から、人間についても妊娠中の母親のばく露により子ども生殖器の異常や成人後の精子数減少など重大な影響を及ぼすことが指摘されています。
 国際食品規格委員会(コーデックス委員会)の諮問機関のFAO/WHO食品添加物合同専門家会議(JECFA)は、ブチルパラベンとプロピルパラベンの保存料としての使用を認めていません。日本では食品の保存料としてパラベンはほぼ使用されていませんが、栄養ドリンク(医薬部外品)の一部にはいまだに保存料が使われており、摂取は控えるべきです。
*1…東京都福祉保健局ホームページ「食品衛生の窓」参照。
*2…内閣府食品安全委員会化学物質・汚染物質専門調査会鉛ワーキンググループ「鉛に関する食品健康影響について(一次報告)」2012年3月
*3…同上
*4…Kaji, Biomedical Reserch on Trace Elements 2007; 18.