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ネオニコチノイド系農薬の使用中止を求める緊急提言(Ⅰ・Ⅱ)

ネオニコチノイド系農薬の使用中止を求める緊急提言Ⅰ

・1990年代初めから、欧米諸国では、ハチの大量死・大量失踪が大きな社会問題となっていました。ローワン・ジェイコブスン著『なぜハチは大量死したのか』によれば、すでに2007年春までに北半球から4分の1のハチが消えたとされています。日本でも、2009年に全国各地でハチの大量死・大量失踪が報告されました。欧米諸国では、主原因は新農薬のネオニコチノイドではないかと考え、予防原則に基づく暫定的使用禁止措置をとる国も出てきました。しかし、日本では、そのような動きは全くなく、このまま放置していると、ハチをはじめ野生生物に壊滅的影響を及ぼしかねません。のみならず、ネオニコチノイド系農薬は、子どもの脳の発達に重大な影響を与えるおそれが指摘されており、未来世代にとって取り返しのつかない事態になりかねない状況でした。
 そこで、JEPAでは、2009年からこの問題への取組みに着手し、2010年2月には、ネオニコチノイド系農薬7種の使用禁止、食品残留基準値の強化、ミツバチ大量死の原因究明、人の健康への影響の調査の実施等を求める「ネオニコチノイド系農薬の使用中止を求める緊急提言」を取りまとめ、当時政権を担っていた民主党本部に提出し、民主党副幹事長兼厚生労働省担当の青木愛衆議院議員と、副幹事長兼幹事長室農林水産省担当の一川保夫参議院議員と意見交換を行いました。
ニュースレターNo.62

ネオニコチノイド系農薬の使用中止を求める緊急提言Ⅱ

・ところが、その後、農水省、厚労省とも、農薬使用についての情報・連絡を緊密にするなどの部分対策に終始し、抜本的な対策を講じようとしませんでした。この間にも、ハチ、チョウなどの訪花性昆虫やスズメなどの鳥類の激減が各地から報告される一方、ネオニコチノイドは、農・林業用のみならず、シロアリ駆除剤、家庭用殺虫剤、住宅建材にまで多用されるようになり、このままではシックハウス症候群の発症や胎児・子どもの脳の発達への影響が強く懸念される状況でした。
 そこで、JEPAでは、2011年3月に、上記の緊急提言事項に追加して、ネオニコチノイドの使用自粛の推進、空中散布の中止、米の規格基準から着色粒項目を削除するなどより現実的な対策と、シロアリ駆除剤・家庭用殺虫剤・住宅建材の使用禁止、生態系への影響の調査等を求めるネオニコチノイド系農薬の使用中止を求める緊急提言Ⅱを取りまとめ、政府に提出しました。

〈調査活動・公開学習会・国際セミナー等の開催〉

・提言作成にあたっては、以下のとおり、公開学習会を開催してさまざまな分野の専門家からお話をうかがうとともに、現地調査に赴き、関係者からヒアリングを行いました。特に養蜂家の方々からは、現場で実際に起きている事実をうかがうことができ、原因究明のための有力な証拠を得ることができました。また、ネオニコチノイド系農薬の規制を導入している欧州諸国の取組みに学ぶために、2回にわたって国際セミナーを開催しました。
 さらに、こうした学習会や調査活動を通じて知り合った方々や団体とは、その後もネオニコチノイド系農薬の使用中止を求める活動に連携して取り組むことにつながりました。

・2009年7月18日 公開学習会「日本でなぜミツバチが減少しているのか~ゆたかな生態系を取り戻すために~」開催
 ①「ミツバチ問題から考える生物多様性・生態系の危機」鷲谷いづみ氏(東京大学)
 ②「ミツバチ減少の真の原因はこれだ!」藤原誠太氏(養蜂家)
 ③「銀座ミツバチプロジェクトって?」田中淳夫氏(銀座ミツバチプロジェクト)]
 ニュースレターNo.58

・2009年9月13日 公開学習会「どうする!増え続ける浸透性農薬ネオニコチノイド~深刻なネオニコチノイド系農薬の人体被害~」開催
 ①「ネオニコチノイド系農薬の健康被害」青山美子氏(医師)
 ②「ネオニコチノイド中毒」平久美子氏(医師、東京女子医大)
 ③「危惧される新農薬のヒト脳への影響」黒田純子氏(脳科学者)
  ニュースレターNo.59

・2010年7月24日 講演会「ネオニコチノイド系農薬のミツバチ、生態系、人体への影響」開催
  ①「ネオニコチノイド農薬による昆虫と鳥類の消滅久志富士男氏(養蜂家)
  ②「環境化学物質と子どもの脳の発達障害―ネオニコチノイド・有機リン農薬の危険性―」黒田洋一郎氏(脳科学研究者)
  ニュースレターNo.64

・2010年9月10日~12日 北海道におけるネオニコチノイド系農薬による被害実態と対策について、道の担当職員、養蜂家からのヒアリング調査を行いました。
  ニュースレターNo.65

・2010年9月11日 公開学習会「ネオニコチノイド系農薬問題札幌学習会」開催
  講師:立川涼氏、藤原誠太氏、黒田洋一郎氏、水野玲子氏
  ニュースレターNo.65

・2010年11月20日 公開学習会「ネオニコチノイド系農薬問題福岡学習会」開催
  講師:立川涼氏、久志富士男氏、黒田洋一郎氏、水野玲子氏
  ニュースレターNo.66

・2011年11月12日~13日 「ネオニコチノイド系農薬国際市民セミナー」開催
  ①「ドイツ・EUでのミツバチ被害の実態」
講師:ウォルター・ヘフェカー氏(養蜂家・ヨーロッパ職業的養蜂家連盟代表)
  ②「EUにおけるネオニコチノイド系農薬規制とイギリスの現状」
     講師:マット・シャルドロウ氏(イギリスのNPO団体バグライフ代表)
  ③「ネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響」
     講師:大谷剛氏(兵庫県立大学教授)
  ④「環境化学物質と子どもの脳の発達障害」
     講師:黒田洋一郎氏(脳科学研究者)
  ニュースレターNo.72

・2011年11月30日 院内集会「松枯れ防止の農薬空中散布の中止を求めて」開催(ネオニコネットと共催)
  ①「生態系の構造と人為的干渉の影響」
     講師:青木淳一氏(横浜国立大学名誉教授)
  ②「植物生態学から見た松枯れの位置づけ」
     講師:林一六氏(筑波大学教授)
  ③「農薬空中散布による人体被害」
     講師:田口操氏(空中散布被害者 長野県在住)
  ニュースレターNo.72

・2012年2月19日 講演会「合成ピレスロイド系農薬の毒性について」
  講師:曽根秀子氏(国立環境研究所)
  ニュースレターNo.74

・2012年11月20日 院内集会「無人ヘリによる農薬空中散布を考える」開催
  講師:橘高真佐美氏(JEPA)、水野玲子氏(JEPA)、辻万千子氏(反農薬東京グループ)、村山隆氏(信州上田・里山保全ヤマンバの会)
  ニュースレターNo.78

・2012年12月9日~10日 国際市民セミナー「生態系と子どもを農薬から守るために~EUの農薬規制から学ぶ~」開催
  ①「新しいEUの農薬規制について」
     講師:スーザン・ハフマン氏(農薬アクションネットワーク)
  ②「EU農薬規制枠組みの進化~有機リン系農薬・ネオニコチノイド系農薬の例~」
     講師:ノア・サイモン氏(ベルギー養蜂研究情報センター)
  ③「REACHと農薬」
     講師:クリスチャン・シエブル氏(フランス環境NGO連合、元欧州環境局)
  ④「日本の農薬規制とその問題点」
     講師:辻万千子氏(反農薬東京グループ)
  ニュースレターNo.78

〈その後の経過〉

 ネオニコチノイド系農薬の使用中止を求める運動は、ミツバチ愛好家や養蜂家から、市民団体、生協団体などにも広がりを見せ、次第に社会問題化されるようになってきました。国会でも取り上げられ、脱ネオニコを打ち出る生協団体も出てきました。JEPAが作成したパンフレット「新農薬ネオニコチノイド系農薬が脅かすミツバチ・生態系・人間」は好評で、4回にわたって改訂版を刊行し、出版部数は合計2万部以上にも及びました。
 こうした中、2018(平成30)年に農薬取締法が改正され、登録農薬の再評価制度が新たに導入されたところ、再評価の対象の第1順位にネオニコチノイド系農薬が選定され、2021年度から再評価手続が開始されています。また、農薬の生態影響を評価する試験については、従来のオオミジンコに比較してはるかにネオニコチノイド系農薬に対する感受性の高い種であるユスリカ試験が追加されることになり、再評価の結果が注目されています。